平成25年 7月18日 観音様縁日

 毎月18日は観音様のご縁日になります。当山では午前11時より大護摩祈祷が始まり、12時頃から住職の法話となります。以下、法話の抜粋です。

一年の中で一番暑い7・8月、先祖供養の時期になりました。
 全国の寺院で、7・8月に行われるのが施餓鬼供養です。奥の深い、私たちの心の在り方に繋がってくる供養になります。お釈迦様の10代弟子の中の目連尊者は、お釈迦様に長年仕える強い神通力を持った方でした。ある日夢の中で、このままだと餓鬼道に堕ちてしまうと言われ、お釈迦様にお尋ねしたところ、いろんな食べ物を施しながらたくさんの餓鬼の供養をしなさいと言われ、言われる通りに餓鬼の供養を行いました。
 その時お釈迦様が、目連に授けた教えがほかならないこの施餓鬼の法となっているのです。 自分の先祖だけでなく、供養されず彷徨っている餓鬼までも救う心持ちが、自分自身を救うということになるのです。
もう一つ、身近な先祖だけでなく命の根源となる先祖までお迎えするのがお盆です。
 沖縄では、家族全員がお墓に集まり、食事をし、歌ったり、踊ったり、賑やかに先祖の帰りをお迎えします。よく盆踊りと言いますが、先祖を喜んでお迎えする、また、秋の豊作を祈る為始まったと言われるように、自然の恵みに感謝すると同時に、大切な方が亡くなった今でも、家族皆で寄り添い前を向いて明るく一生懸命生きていますという気持ちを形に表しているのです。
 また、先祖を大切にする仏教的な習慣・文化として、お釈迦様のお誕生日の花祭りもありますが、日本人はクリスマスに重きを置き、仏教の教えを説いたお釈迦様の花祭りには関心を示さない方も多いようですが、仏さま・先祖に感謝する日本人特有のいにしえぶり、文化の継承を忘れてはならないと思っています。感謝、感謝と言葉では言っても、心・体で相手にお伝えするのはとても難しい事です。相手が生きている間に伝える事ができれば、何の悔いも残りませんが、伝える事ができなくても、忘れず精一杯日々を過ごし生きていく事が、亡くなった方へ感謝を伝える追善供養となるのです。
 来月始まる四万六千日祭は、8月8日~10日までの縁日にお詣りすればお観音様のご利益を頂ける、これも日本に根付いた文化と言えます。
 観音霊場は全国どこに行ってもお詣りできます。実は、観音様と私たちはとても近い所にあり、未熟な私達を救うため、姿・形を変えて、悩んでいる人々をお救いくださる観音様の慈悲、大慈悲であり今でも観音信仰と言われ、人々の信仰を集めています。
 7・8月には、地蔵盆もあります。若くして亡くなる方や、生まれてすぐ亡くなる赤ちゃんも多かった事から、子を慈しむ母の心がお地蔵様を奉り、地蔵信仰を日本各地に広め現在に至っているのです。こういう事を深く考えお参りすることは少ないと思いますが、7・8月というご先祖さまに一番近い時期を迎え、新たな気持ちでお精霊さま、ご先祖さまを一緒にお迎えして頂きたいと思います。
 皆様は、毎日がご先祖様とのおつきあいかもしれませんが、普段の生活の中では、ご家族の皆さんと亡くなった方へ向かう気持ちを話し合うということもないでしょう。お盆の時は、ご家族が自宅へ帰りお揃いになる。そういう時こそ、お互い先祖への思いを言葉にし、懐かしい思いを寄せてあげることが、亡くなった方が喜ぶ事で供養になり、だからこそ我々が忘れることなく迎えてあげる準備をするお盆の行事も、子々孫々へ伝えなければならない大事な仏教徒の文化であるのです。
 8月17,18日に行われます、京都の大文字焼きの送り火は、奈良・平安の時代から亡くなった方が迷わないように火を使いご供養する形であります。
 迷わず自宅へ帰るように灯篭に灯りをともし、灯篭の下には、手を洗う水とタオルを用意しご先祖さまをお迎えする。御仏壇には、自宅へは早く帰り、西方浄土へは遅く戻るように、と野菜のなす、キュウリをお供えする等、日本各地に今でも根付いている風習もあります。
 今年はそういう思いの中にご先祖さまをお迎え頂きたいと思っています。
 過去を振り返り、現在を見つめ、今は亡き精霊に供養を尽くすことが、人を思いやる事のできる自己の完成に繋がるのではないでしょうか。
 今年の夏は殊の外、蒸し暑い日々が続いております。熱中症などに掛からないよう、くれぐれもご自愛下さい。